突然の別れ

その知らせは、いつも通りの私の嫌いな休日の昼どきに突然やってきた。
 
 005.gif常々言っているが・・・(私・ひょっこりは)休日というのが嫌いである。
 なんにも手伝ってくれない家族が顔を合わせ、自分だけ台所で、洗濯場で、ひとりコマネズミみたいに立ち働きしなければならない日だからだ。
 こっちは例によって、洗濯をまわしながら、遅めの朝食の洗い物をしていた。
 食べると娘はとっととバイトに駆け出し、夫はと言えば、ダイニング炬燵に座り
 これまた例によって古本屋で探してきたカビ臭~い匂いのしそうな時代小説を黙々と読んでいた。
 
 こっちは洗い物がすめば、掃除機にゴミまとめに、そうこうしているうちに洗濯機は止まり、またそれを干す。午後は買い物に、洗濯物の取り込みに座っているひまもない。
 動いているうちにだんだん怒りの炎がメラメラしてくる。

 「あのさ~ 困ってる人や大変そうな人がいたら ひとこと 何かしましょうか?とかお手伝いできることありますか?とか言いましょうって道徳の時間習わなかったか まあ そっちは修身って言い方だったかもしれないけど・・・ いいかげん気づけよ!」022.gifって言いたいが・・・もちろん心の声である。
 言っても無駄なことは20年かけてわかってしまっている。

 だから今日も黙々と翌日の静かな月曜を思いながら家事に追われていた。
 そんなところにその電話は鳴ったのである。

 「もしもし ひょっこりさん S子がS子が昨晩亡くなったの」
 S子ちゃんのお母さんからである。
 S子ちゃんというのは、私がヘルパーとして定期的に伺っている重度の脳性マヒのお譲さんだ。
 この10日に33歳の誕生日を迎えたばかりだ。
 生まれてからずっと寝たきり生活ではあったが、食事はきちんと租借し、私とは5年の付き合いであった。  「急性肺炎でね・・・夜中に起きた主人がのぞいたら死んでたの ほんとに急で 息をつまらせキュッと逝ってしまったみたい 大きなお葬式はしないのよ 家族でそっと送るつもり でも明日もうあの子焼いちゃうんですって  そしたらお知らせしないと明後日いつも通りいらしてS子が骨になっていたらきっとびっくりすると思って日曜に悪いけど電話したの」とお母さん。007.gif

 もう怒りも愚痴もぶっとび!
 とるものもとりあえず、S子ちゃんのお宅に駆け込む。
 ちょうど棺に納める所であった。 そうまさに映画「おくりびと」の光景である。
 「ひょっこりさん ありがとう S子ちょうどこれから納めるところよ」

 ご両親とお兄さん家族とともに祭壇ができあがるまで一緒にいさせてもらいS子ちゃんを偲んだ。
 お父さんいわく
 「帰宅すると返事が返ってこなくてもいつもS子にただいまと言い続けて33年 もうそれを言うこともなく・・・これからはほんとに年寄り2人だけの家になってしまうんですね S子のものがみんななくなると年寄り夫婦には広すぎる家かもしれない」
 お母さんいわく
 「ずっとずっとおむつをいじる生活してきたの S子が生まれてからずっと そのうち母までおむつをあてがうようになりいつになったら解放されるのかって正直思ったこともあったけど・・・母がなくなり こうしてS子がいなくなるとぽっかり心に穴があいて 私これからどうしていいかわからない」

 人の死の前では、小さな怒りや、すれ違いや、迷いや、失望なんて・・・
 いったいどんだけ~ とるにたらないものだろう。
 
 生きているから、笑うんだ! 生きているから歌うんだ! 生きているから悲しいんだ!
 なんか「手のひらを太陽に」のまんまだ(汗)

 そう、生きているからこそ沸々と湧き上がる希望もあり・・・生きているからこそ味わうもろもろの感情、
 それらを実感できることこそ人生の滋養なのだろう。
 
 S子ちゃん ひょっこりさんは頑張って生きてみるからね。
 せっかくまだある人生だものね。 
 口もきけなかったS子ちゃんだけど・・・あなたの家に伺っていっしょに過ごす時間は、自分の家でのいやなことやストレスを上手にリセットできる時間だった。
 明日から、火曜 木曜 ときたまの土曜をどうしていいかわからないけど・・・。

 あなたとの時間忘れないよ 合掌。
by hyokkorijima | 2009-02-22 20:46
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